(原因と克服方法の解説)

  • 更新日 2021.06.14
  • 1.はじめに

    以前、「万引き家族」という映画が話題になりましたが、この映画の主人公たちのように実際に万引きをしなくても、自分が万引きをしたと疑われるのではないかと不安になり、悩んでいる人も多いものなのです。

    これは、「万引き恐怖」と言われることもある神経症の症状になります。

    また、万引きに限らず、色々な面で自分が周りの人たちから疑われているように感じ、悩んでいる人も多いものなのです。

    これが嫌疑恐怖と言われているものですが、このページでは、こういう悩みを持った人に少しでも参考にして頂ければと思い解説しております。

  • 2.嫌疑恐怖とは

    これは例えば、会社でお金がなくなった時に自分が犯人だと疑われるのではないかと不安になってしまう悩みだと言えます。

    また、スーパーで買い物をしている時に自分が万引きをしていると疑われるのではないかと気になってしまうとか、満員電車に乗っている時に側にいる若い女性に痴漢だと疑われたらどうしようと感じ不安になってしまうという場合も含まれます。

    最近はニュースで冤罪のことも取り上げられることが多くなったために、この嫌疑恐怖に悩む人も増えているのではないかと感じます。

    また、自分が人の物を盗んだと疑われるのではないかと感じ人間関係を悪くしている人も案外多いものだと思います。

    こういう意味で、この悩みは他人から変に思われているのではないかとか、疑われるのではないかと、人の思惑を気にするという点で、対人恐怖症の中に入るものだと言って良いと思います。

  • 3.嫌疑恐怖かどうかのチェック

    下に箇条書きで具体的な例を書かせて頂きました。

    これらの例の中に、もし当てはまるものがあれば、あなたの悩みは嫌疑恐怖の可能性が高くなると思います。

    1)自分が人の物を盗んだと疑われるのではないかと不安になる。
    2)本当は腹黒い人なのではと疑われるのが怖い。
    3)女の子と遊んでくると言っても、男の子と遊んでるのではないかと疑われるのが辛い。
    4)「万引き」だと疑われるため買い物に行けない。
    5)近所の人たちから虐待を疑われているようで辛い。
    6)卑怯なことをする人だと思われるのが怖い。
    7)相手から荷物を取られないように警戒されるのが悲しい。
    8)店員や警備員から万引き犯と疑われているように感じてしまう。
    9)色々な面で人から疑われているのではと感じ憂鬱になる。
    10)クラスメートや先生から仮病を疑われるのが怖く辛い。
    11)浮気を疑われるようで異性を避けてしまう。
    12)整形したと疑われるのが怖い。
    13)品位を疑われるように感じ自分の行動に自信が持てない。
    14)嘘を付いたように疑われそうで同僚に会うのが怖い。
    15)お金がなくなった時に自分が犯人だと疑われるのではないかと不安。
    16)満員電車で若い女性に痴漢だと疑われたらどうしようと感じ窮屈になる。

  • 4.嫌疑恐怖の時に同時に起こりやすい悩み

    人から疑われているのではないかと悩んでいる時は下記のような症状を感じていることも多いと思います。

    1)視線恐怖症
    スーパーなどに入った時に店員や警備員の目が気になり、ぎこちなくなってしまうというのも、よくあるパターンだと思います。
    長い時間、店内に居たり、自分の行動や態度がぎこちないと感じていると、どうしても、これらが「後ろめたさ」を生み、店員や警備員から見られているように感じてしまうものなのです。
    症状が強くなっている時は、単に見られていると感じるのではなく、監視されているように感じてしまうこともあります。

    2)外出恐怖
    これは買い物に行ったり、会社や学校に行くことに対して不安や恐怖を持つようになってしまう悩みであり、パニック障害や不安神経症の場合に見られることが多いものです。 しかし、嫌疑恐怖に悩み劣等感や「後ろめたさ」を強くしている時は、このために外出が困難になることも多いものなのです。 また、デパートに行って店員や警備員に冷たい目で見られたらどうしようと感じ、思うように買い物に行くことが出来なくなってしまう人も、中にはいるものなのです。

    3)対人不安
    顔が赤くなったり、手が震えたりする悩みを持っている時も人と接する時に不安を感じやすいものです。
    これと同じで人から疑われるのではないかとビクビクしている時も人に対して不安を感じやすくなっているものなのです。

  • 5.嫌疑恐怖に影響すること

    この悩みの場合も基本的には神経質性格を持っていることが影響すると思います。

    私も含めてですが、神経質性格を持っている人は人一倍、理想が高く、「かくあるべし」の考えにとらわれやすいものなのです。

    そして、このために、お店などで万引きをするのは絶対にあってはならないことだとか、人の物を盗むのは人間として最低のことだといった考えを持ちやすいものなのです。

    そして、こういう「かくあるべし」の考えがあると、どうしても自分が万引きをしたり、人の物を盗んだと疑われたらどうしようという不安も強くなるものなのです。

    そして、この不安だけに目を向け、これを無くそうとして行動してしまうと、ますます嫌疑恐怖の症状を強くしてしまうということなのです。

    ですから、こういう「かくあるべし」の考えを持っているかどうかが大きく影響すると言って良いと思います。

  • 6.私の体験から嫌疑恐怖について言えること

    私の今までの経験から感じることは、嫌疑恐怖に悩むような人は人一倍、善良で見栄っ張りな人が多いということです。

    同じ神経質性格を持った人でも、人それぞれに特徴はあるものなのです。

    つまり、見栄っ張りの傾向の強い人もいれば、心配性の傾向の強い人もいるというように、微妙に異なってくるものなのです。

    また、人の物を盗むのは人間として決してあってはならないことである、といった教育を小さいころからされてきた人ほど、嫌疑恐怖に悩みやすいのではないかと思います。

    つまり、親が学校の先生とか教会の牧師さんといった道徳観の強い家庭で育った人の方が悩みやすい傾向にあるのではないかと思います。

  • 7.原因

    さきほど神経質性格が影響していると書きましたが、これが嫌疑恐怖に悩むようになる1つの原因だと言って良いと思います。

    そして、同じ神経質性格でも「かくあるべし」の道徳的な考えを強く持っている人の場合に起こりやすいように思います。

    つまり、こういう下地のある人が、たまたまスーパーで買い物をしていた時に万引きに間違われるような出来事があったりすると、これがキッカケになって嫌疑恐怖に悩むようになることが多いものなのです。

    そして、これが森田療法で言っている「外的要因」ということになります。

    つまり、神経質性格という「内的要因」と、この「外的要因」が嫌疑恐怖になる原因だと言って良いと思います。

  • 8.克服方法

    嫌疑恐怖の場合は森田療法の学習をしていく中で人から疑われているのではないかという「とらわれ」が薄れてくれば、これに比例して楽になってくるものなのです。

    具体的には自分が人から疑われているように感じながらもお店に買い物に行ったり、学校や会社に行くというように、目の前の「やるべきこと」を逃げずにこなしていくことが大切になるのです。

    これが森田療法で言っている目的本位の行動ということになるのですが、この行動の繰り返しの中で「目的本位のクセ」が身に付いてくると、これに比例して「とらわれ」が薄れてくるものなのです。

    そして、この結果として嫌疑恐怖を克服することが出来るということなのです。