(原因と克服法の説明)
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更新日 2021.07.17
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1.嘔吐恐怖症とは
嘔吐は食べた物を吐くという意味になりますが、吐き気の不安のため食事が出来なかったり乗り物に乗れなかったりする嘔吐恐怖症においては吐き気を催すという意味も含まれます。
後で具体的な状態については詳しく説明させて頂きますが、嘔吐恐怖症の良く見られる症状には大きく分けて2通りあります。
1つ目は吐き気の不安のために思うように食事が出来なくなってしまうという症状です。
食事をする前とか食事をしている時に嘔吐の不安から吐き気を感じ食べられなくなってしまうという症状になります。
このため、外食が困難になっている人も多いものです。
2つ目は電車とか飛行機といった乗り物に乗っている時に嘔吐の不安から動悸や息苦しさと共に吐き気を感じるために乗り物に乗れなかったりするという症状になります。
このように、嘔吐恐怖症の表れ方には大きく分けて2通りありますが、このために外食が出来なかったり、乗り物に乗る事が出来なくなったりして、社会生活を送る上で支障が出てくるものなのです。
なお、今、説明させていただいたような、外食や乗り物に乗る状況を前にして吐き気の不安を強く感じてしまう場合は不安神経症に含まれます。
これに対して、嘔吐の不安から胃の不快感や、むかつきと共に、常に吐き気が気になってしまう場合は普通神経症に含まれます。
ただ、いずれの場合も実際に吐いてしまうことは少なく、嘔吐したらどうしようという不安を感じるところに特徴があります。
つまり、嘔吐恐怖症の特徴は一言で言うと吐き気に対する「とらわれ」が出来た状態だと言って良いと思います。
そして、これも神経症の一種ですから病院で胃カメラなどの検査をしても特に異常が見られないものなのです。
なお、下記の例が嘔吐恐怖症に含まれるものですので、ご自分の状態と照らし合わせてチェックしてみると良いと思います。
(嘔吐恐怖症の具体例)
1.電車や飛行機、バスなどに乗っている時に、突然、嘔吐の不安から動悸や息苦しさを感じる。
2.吐いてしまったらどうしようと吐き気の不安から外食が出来なくなる。
3.他人が吐いている現場を見た時や嘔吐を連想させる言葉に接した時に恐怖を感じてしまう。
今、上に具体的な例を書かせて頂きましたが、嘔吐恐怖症の場合も他の神経症の場合と同様に基本的には「死の恐怖」が根本にあると言って良いと思います。
食事をしている時や乗り物に乗っている時に吐いてしまい、周りの人たちに無様な姿をさらすことになったらどうしようという社会的な「死の恐怖」が、その1つだと言えます。
また、吐くことで窒息したりして、そのまま死んでしまったらどうしようという直接的な「死の恐怖」もあると思います。
ですから、嘔吐恐怖症は吐くことで死んだり、無様な姿をさらすことになったらどうしようという不安に対する「とらわれ」が出来た状態だと言っても良いと思います。
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2.原因
嘔吐恐怖症の場合も他の神経症と同様に「外的要因」と「内的要因」が重なって起こるものなのです。
「外的要因」としては、人が嘔吐している現場を目撃したとか、食べ過ぎで吐いてしまい苦しい思いをしたといったショックな経験が挙げられると思います。
そして、「内的要因」としては、神経質性格であるということが前提として挙げられます。
つまり、神経質性格から来る完全欲の強さや心配性といった特徴のために、嘔吐することに対して、これらを絶対にあってはならない異常なことだと考えてしまうところに根本的な原因があると言って良いと思います。
つまり、こういう「かくあるべし」の誤った認識があると、どうしても、嘔吐や吐き気だけに目を向け、これを無くそうとして誤った方向の行動を取るようになってしまうものなのです。
これが森田療法で言っている気分本位の「はからい」の行動ということになるのですが、これによって嘔吐恐怖症の症状を、ますます強くし「とらわれ」が出来てしまうのです。
ですから、ここに一番の原因があると言って良いと思います。
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3.薬を用いない克服法
今、原因のところでも書かせて頂きましたが、嘔吐恐怖症の場合は胃などの身体的な異常はないものなのです。
ですから、いくら薬を飲んでも改善してこないものなのです。
つまり、嘔吐恐怖症を克服していくためには嘔吐や吐き気に対する「とらわれ」を解消していくことが大切になってくるのです。
そして、このためには、嘔吐や吐き気に対する認識を正し、目的本位の行動を積み重ねていくことが大切になってくるのです。
つまり、嘔吐や吐き気の不安はそのままに目の前の「なすべきこと」を逃げずにこなしていくという目的本位の行動をとることが大切になってくるのです。
具体的には、今は嘔吐や吐き気に対する「とらわれ」が出来ている最中だから食事や乗り物に対して不安を感じて当然なんだと受け止めていくことが大切になります。
そして、不安を感じながらも外食したり、電車や車などに乗って出かけるようにしていくことが大切になってくるのです。
こういう形で目的本位の行動を積み重ねていく中で、嘔吐や吐き気に対する「とらわれ」が和らいでくるものなのです。
ですから、これが嘔吐恐怖症の薬を用いない克服法になるのです。