(症状と克服のための具体的な説明)

  • 更新日 2021.06.15
  • 1.症状

    加害恐怖は自分の不注意などによって人や動物に危害を与えてしまうのではないかとか、傷つけてしまったのではないかと不安になる症状を言います。

    危害恐怖とか、罪悪恐怖と呼ばれることもありますが、この症状も強迫神経症の一つの症状になります。

    具体的には、刃物などを見ると自分が人や動物を傷つけてしまうのではないかと不安になるといった形で現れてくる症状になります。

    また、車の運転をして通勤している人の中には自分では気付かなかったけれど人や動物を引いてしまったのではないかと不安になり、通ってきた道を引き返し確認しに行ったりすることもあります。

    また、人の赤ん坊を見て、傷つけたり、突き落としてしまうのではないかと不安になる女性も多いものです。

    そして、加害恐怖の症状の背景には、人や動物を傷つけたり危害を与えたりすることは絶対にあってはならないという「かくあるべし」の考えがあると言って良いと思います。

    このため、クリスチャンとか仏教徒、教育者といった宗教や教育に熱心な人の方が道徳的な「かくあるべし」の考えにとらわれやすく、加害恐怖の症状に悩むことが多いように思います。

    つまり、こういう人達は宗教や道徳の教えから、人や動物を傷つけたり、危害を与えることは絶対にあってはならないという思いを強く持ちやすいのだと思います。

    特に、こういう人たちの中で神経質性格を持っている人の場合は、人一倍、生真面目であり、宗教や道徳の教えを真に受け、より「かくあるべし」の考えにとらわれやすいものなのです。

    そして、人や動物を傷つけたりして危害を与えることは絶対にあってはならないという「かくあるべし」の考えがあると、この裏返しで、人を傷つけたり危害を与えてしまったらどうしようという不安が強くなるものなのです。

    そして、この不安だけに目を向け、これを無くそうとしてしまうと、逆にますます不安を強くしてしまい、この結果として加害恐怖の症状として現れてくるのです。

    つまり、ここに加害恐怖の原因があると言って良いと思います。

  • 2.薬を用いない克服法

    今、上にも書きましたが、人や動物を傷つけたりして危害を与えることは絶対にあってはならないという思い、つまり「かくあるべし」の考えがあると、この裏返しで、人や動物を傷つけたり危害を与えてしまったらどうしようという不安が強くなるものなのです。

    そして、この不安だけに目を向け、これを無くそうとすることで、逆にますます不安を強くしてしまい、この結果として加害恐怖の症状が起こってくるのです。

    ですから、加害恐怖の症状を克服していくためには、人や動物を傷つけたり危害を与えてしまったらどうしようという不安を感じながらも、この不安に引きずられずに行動していくことが大切になってくるのです。

    つまり、森田療法では目的本位の行動と言っていますが、人や動物を傷つけたり危害を与えてしまったらどうしようという不安を感じながらも目の前の「なすべきこと」を一つ一つ、きちんとこなすようにしていくことが大切になってくるのです。

    また、日頃から、生活の中の他の面でも目的本位や「あるがまま」など、森田療法の考えに従って行動するようにしていくと、この積み重ねの中で少しずつ目的本位の「クセ」がついてくるものなのです。

    そして、こうなれば、加害恐怖の症状を感じる時でも、人を傷つけたり危害を与えてしまったらどうしようという不安を必要以上に大きくしなくて済むようになってくるものなのです。

    ですから、これが加害恐怖の薬を用いない克服法ということになります。