(原因と対策の解説)

  • 更新日 2021.06.10
  • 1.はじめに

    頭痛や肩こり、不眠、微熱、めまい、吐き気、胃腸障害など、慢性的な体調の悪さが続いていて、病院に行って検査をしてもらっても、どこにも異常が見つからないということで、薬を飲んだり、整体や針灸に通院し治療をしてもらっている人も多いのではないかと思います。

    しかし、こういう慢性的な体調不良に悩んでいる人たちの中には自律神経失調症の人もかなり含まれているように思います。

    特に心配性や完璧主義、負けず嫌いといった神経質性格の特徴を持っている人の場合は、自律神経失調症の可能性が高くなると思います。

    自律神経失調症は昔は「血の道症」と呼ばれることも多かったようですが、今では月経前緊張症とか更年期障害と呼ばれることも多いです。

    なお、森田療法では普通神経症に含まれる症状になります。

    しかし、病名はどうであれ、今、実際に慢性の治りにくい症状に悩んでいる人たちが大勢いるというのは事実だと思います。

    このページでは、こういう今現在、実際に原因が分からない慢性的な微熱や頭痛、不眠、めまい、吐き気、胃腸障害などの自律神経失調症の症状悩んでいる人に、いくらかでも希望を持ってもらえればと思い作成いたしました。

  • 2.自律神経失調症とは

    頻繁な寝汗、慢性的な頭痛、なかなか治らない肩こり、突発的な下痢、めまい、吐き気、不眠、疲労感などの体調の悪さが現れてくるのが自律神経失調症の特徴になります。

    そして、このために医療機関を受診することになります。

    しかし、内科などで血液検査やレントゲン、MRIやCTといった色々な検査をしても原因が分からない場合に自律神経失調症という診断をされることが多いように思います。

    ただ、最近は、うつ病の診断基準が広くなったために、自律神経失調症の代わりに、うつ病や気分障害という病名を付けられることも増えているように感じます。

    そして、内科の医師から心療内科や精神科などでカウンセリングや投薬治療を受けることを勧められるということも多くなっているように思います。

    しかし、自律神経失調症は体調の悪さに対する「とらわれ」が原因になっている場合が多いものなのです。

    このため、一般的なカウンセリングや投薬治療を受けても、思うように症状が改善しないことが多いものなのです。

    なお、これはドクターショッピングと言われるものですが、自律神経失調症で悩んでいる時は1つの病院で精密検査をしても異常がないと言われ、しかし、症状は明らかにあるために、別の病院で診てもらうということを繰り返すことも多いものです。

    しかし、別の病院で診てもらうたびに違う診断をされたり、また、医師から言われた言葉が逆に気になってしまい、ますます疲労感や体調不良などの症状を強くしてしまうことも多いものなのです。

    つまり、こういうパターンになるのも自律神経失調症の場合の特徴だと言って良いと思います。

    また、自律神経失調症の場合、異常な汗や痛み、肩こり、下痢、めまい、吐き気、不眠、疲労感や体調不良といった具体的な体調の悪さがあるために、病院の薬や市販薬だけではなく、漢方やサプリメントを飲んで治そうとしたり、針灸や整体に通ったり、中には怪しい宗教に頼ってしまう人も多いものです。

    しかし、このように、体調の悪さだけに目を向け、これを治そうとする方向の治療を行っても、なかなか症状が改善しないのが自律神経失調症の場合の特長なのです。

    これは自律神経失調症の場合は、体の器質的な異常ではなく、心の置き所、つまり、体調の悪さに対する「とらわれ」が原因になっているからなのです。

    つまり、この体調の悪さに対する「とらわれ」が改善しない限り、いくら薬を飲んだり、鍼灸や整体の治療を行っても良い方向には向いてこないものなのです。

    また、うつ病、登校拒否、更年期障害、月経前緊張症、外傷後ストレス障害(PTSD)、メニエール病、不整脈、舌痛症、顎関節症などの中にも自律神経失調症が原因になっている場合が多いと思われます。

  • 3.ある方の体験例

    参考までに一人の方の例を挙げさせて頂きます。


    (自律神経失調症に悩むTさんの例)

    Tさんは秋田県出身の25歳になる女性の方です。

    高校を卒業するまでは秋田の実家で、ご両親、お祖母ちゃん、お姉さんの5人家族の中で育ちました。

    家中で一番の年下ということで甘やかされて育ったそうです。

    また、小さい頃から病気がちで、少し具合が悪いと学校を休み、医者に行くということが習慣になっていました。

    お父さんとお祖母ちゃんが医者好き、薬好きで、病院にかかっていれば安心する性格だったようです。

    そして、こういう家庭環境に育ったことで、Tさん自身も体の具合が悪いのは、絶対にあってはならないことであるという考えを持つようになったとのことです。

    高校を卒業後、全寮制の短大に入学しましたが、学校や寮生活に馴染むことが出来ず、ある時、呼吸数が多くなり呼吸困難になるという症状が起こりました。

    そして、このことが「キッカケ」になり、短大を中退して秋田に戻り、予備校に通うことになりました。

    ただ、予備校に通いながらも将来の目標が定まらず、短大での出来事もあり劣等感と混乱で一杯の状態だったとのことです。

    こういう状況の中で徐々に気分の不快感や、めまい、脳貧血、不眠、肩こり、疲労感といった自律神経失調症の症状にとらわれるようになりました。

    病院に行き、検査をしてもらっても特に異常が見られないということで、色々な病院に行くことを繰り返していたとのことです。

    そして、徐々に、朝、気分が不快で起きられず、昼ごろ起きて何もせず、夜眠れないと、ご両親に愚痴ばかりこぼす状態になってしまいました。

    また、自分は社会から取り残された劣等生だ、邪魔者だ、何をやっても出来ないダメ人間だという劣等感にさいなまれていました。

    こういう状態の中で、自分は生きている価値がないから、いっそ死んでしまおうと、自殺のことも考えたこともあったようです。

    そして、寝込んでしまった自分が情けなく、親不孝者だと泣いてばかりの日々を過ごしていたとのことです。

    こういう状況の中、ご両親がたまたま見た新聞の中に森田療法のことが載っており、これを「キッカケ」にしてTさんは本を読んだりして森田理論の学習をすることになりました。

    そして、森田理論の学習をしていく中で、良くなったり後戻りしたりしながらも、徐々に何年も続いていた慢性的な体調不良の「とらわれ」から抜け出すことが出来たとのことです。


    Tさんの場合は、ご両親のおかげで、たまたま森田療法に出会うことが出来ましたが、今は、こういう出会いの機会も極端に減っているために、病院の薬を何年、中には10年以上、飲み続けている人が増えていると思います。

    ただ、このように長い年月、誤った方向の治療をしてきても、森田療法の考え方を身に付けることが出来れば、症状は充分、改善してくるものなのです。

  • 4.症状のチェック

    自律神経失調症の主な具体的な症状をまとめると下記のようになります。

    ただ、いずれの症状も病院の検査で特に異常が見られない場合の話になります。

    ですから、このことを踏まえた上で、ご自分の症状が、これらに当てはまるかどうかをチェックしてみると良いと思います。

    (自律神経失調症の具体的な症状)

    1.イベントの前日などに落ち着かず、胃の調子が悪くなり、食事が思うように取れなかったり、便秘が起こる。

    2.夜、寝ようと思っても、なかなか眠れない、今夜もまた眠れないのではないかと不安になる。

    3.何年にも渡って肩が凝っていて、湿布や整体、針灸などをしても、なかなか治らない。

    4.病院でCTなどの検査をしても異常がないけれど、頭痛や頭の重さのためスッキリせず、鎮痛薬を常用している。

    5.疲労感や倦怠感、やる気のなさを毎日のように感じ、栄養ドリンクやビタミン剤を飲んで過している。

    6.休憩時間にトイレに行ったのに、授業中にまたトイレに行きたくなるなど、常に尿意を感じてしまう。

    7.何かの行事の前とか、学校へ行く前など、決まった状況の下で下痢になってしまう。

    8.外を歩いている時や何気ない動作をした時に、ふわふわ感やめまいを感じ気になってしまう。

    9.食べると吐き気がしたり、常に吐き気が気になるために思うように食事が出来ない。

    10.病院の検査では異常がないけれど、胃の不快感や違和感が常に気になってしまう。

    11.お腹が空いていないのに、お腹がグウグウ鳴ったりする。

    12.食事の時などに、のどに違和感を感じ、飲み込みにくさを感じる。

    13.少し動いただけでも動悸や胸部圧迫感を感じる。

    14.耳鳴りや耳の閉塞感を感じることが多い。

    15.目の疲れや乾きなど、目の違和感を感じることが多い。

    16.汗の異常、肌の乾燥やかゆみなど皮膚に関する違和感がある。

    17.胸が締め付けられたり、ザワザワする感じがすることが多い。

    18.心臓が突然早くなったり、脈が跳んだりすることがある。

    19.息苦しさを感じることがある。

    20.整体や鍼に通っても腰痛がなかなか治らない。

    21.季節の変わり目になると体調が悪くなる。

  • 5.原因

    自律神経失調症は交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが乱れることで症状が起こってくると言われていますが、これにはストレスや生活習慣、体質、性格、年齢などが影響していると思います。

    夜更かしなどの不規則な生活を続けていると、これがストレスになって自律神経のバランスが乱れるということが多いと思います。

    また、人間関係や仕事の困難さからストレスを感じ、自律神経失調症に陥ってしまうことも多いのではないかと思います。

    また、私の経験からは、何らかの病気や怪我が「キッカケ」になり、体調の悪さに対する「とらわれ」が出来、これが原因となって自律神経失調症になる人も多いように思います。

    特に心配性や完璧主義、負けず嫌いといった神経質性格の特徴を持っている人の場合は、このパターンが一番、多いのではないかと思います。

    交通事故でムチウチ症になったことが「キッカケ」になり、首の痛みに対する「とらわれ」が出来、何年も首の痛みを引きずってしまうという人も多いものなのです。

    また、網膜はく離で目の手術をした後に目の不調にとらわれるようになり、10年以上も悩んでいるという人もいます。

    このように神経質性格を持ち、体の違和感に敏感な人の場合、病気や怪我で実際に痛みや違和感などを経験すると、これが「キッカケ」になり「とらわれ」が出来やすいのだと思います。

  • 6.薬を用いない対策

    自律神経失調症の場合、具体的な体の異常や違和感が症状として現れるために、痛み止めや漢方薬の服用などに任せていることが多いと思います。

    しかし、今、上にも書きましたが、神経症の「とらわれ」が原因の自律神経失調症の場合は、むしろ薬を飲んだり整体などへ行ったりすると、「とらわれ」を強くしてしまうものなのです。

    そして、この結果、ますます症状を感じやすくなってしまうものなのです。

    つまり、薬や整体など体調不良の症状だけに目を向け、これを無くそうとして取る行動は森田療法で言っている気分本位の「はからい」の行動になってしまうのです。

    ですから、一時的には良くなったように感じても、長い目で見ると、痛みや違和感などの自律神経失調症の症状を、かえって強くしてしまうことになるのです。

    実際に、痛みや違和感などの体の症状が起こると、どうしても薬などに頼りたくなってしまうものなのですが、「とらわれ」が原因の場合は、これを断ちきるようにしていくことが第一歩になるのです。

    ただ、闇雲に薬などを断ちきろうとしても、これではなかなか上手くいかないものです。

    しかし、目的本位など森田療法の考え方を頭に入れた上で頑張るようにしていくと、少しずつ薬などを断ちきることが出来るようになってくるものなのです。

    つまり、体調の悪さを人に訴えないようにしていくと共に、目的本位や「あるがまま」など、森田療法の考えに従って行動していくと、「行きつ戻りつ」しながらも少しずつ痛みや体調の悪さに対する「とらわれ」が薄れてきて、この結果として、自律神経失調症の症状が改善してくるものなのです。

    ですから、これが薬を用いない対策ということになります。