(原因と克服方法の解説)

  • 更新日 2021.06.10
  • 1.はじめに

    勉強や仕事をしている時に全く関係のない他のことが頭に浮かんでしまうということは、誰にでも時にはあるものだと思います。

    しかし、世の中には、このことで悩んでいる人も多いものなのです。

    これが雑念恐怖症と言われるものなのですが、このページでは、この悩みについて私自身の経験も踏まえて解説させて頂きます。

    今、雑念のことで悩んでいる方の参考に少しでもなればと思っております。

  • 2.雑念恐怖症とは

    別のことが頭に浮かび仕事や勉強など、今やっていることに集中できないと悩むのが雑念恐怖症になります。

    この悩みは森田療法では雑念恐怖とも呼ばれますが、例えば仕事をしている時に別のことが頭に浮かんでしまい仕事に集中できないとか、勉強をしている時に隣の家の音が気になってしまい集中して勉強できない、という形で現れることが多いものです。

    睡眠障害で悩んでいる人の中には、寝室にある時計の音が気になってしまい眠れないという人もいますが、このように物音が気になってしまう雑音恐怖症も大きな意味では雑念恐怖症に入ると考えて良いと思います。

    なお、雑念恐怖症は、あがり症や緊張型多汗症などの人間関係の悩みという面の少ない強迫神経症の症状だと言って良いと思います。

  • 3.雑念恐怖症かどうかのチェック

    下に具体的な表れ方を箇条書きにしてまとめました。

    これらの項目の中に、もし当てはまるものがあれば、あなたの悩みは雑念恐怖症の可能性が高くなると思います。

    1)他のことが頭に浮かび勉強に集中できない。
    2)今日予定している約束が頭に浮かび仕事に集中できない。
    3)昨日失敗したことが頭から離れず仕事がはかどらない。
    4)来週の朝礼当番のことが心配で作業をきちんとこなせない。
    5)他の仕事のことが気になり、今している仕事が進まない。
    6)許せない腹の立つことが思い出され家事に集中できない。
    7)他のことを考えてしまい気が散ってしまう。
    8)人と話している時に別の考えが頭に浮かび話に集中できない。
    9)雑念が入ってきて集中して勉強できない。
    10)違うことを妄想してしまい勉強の効率が上がらない。
    11)授業中に他のことを考えてしまうので困る。

  • 4.雑念恐怖症の時に同時に起こりやすい悩み

    雑念が気になり目の前のことに集中できないという状態の時は下記のような悩みも感じていることが多いと思いますので、紹介させて頂きます。

    1)不完全恐怖
    これは自分の取った言動に自信を持つことが出来なくなっている状態だと言っても良いと思います。
    出かける時にガスの元栓を閉めたかどうかが気になり、何度も確認するために家に戻ってしまうという形で起こってくる悩みです。
    雑念恐怖症に悩むような神経質性格の人は元々、人一倍、完全欲が強いものなのです。
    そして、このために何事に対しても100%完全を求めやすいものなのです。
    しかし、100%完全というのは現実にはあり得ないことですから、100%完全を求めてしまうと、常に不満や不安を感じることになってしまうのです。
    そして、この結果、ガスの元栓を閉めたかどうかが気になったりしてしまうものなのです。

    2)心配性
    これも神経質性格のマイナス面が前面に出ている状態だと言って良いと思います。
    神経質性格というのは本来は良い面、つまりプラス面も色々あるのですが、雑念恐怖症などの神経症に悩んでいる時はマイナス面が前面に出ている状態になっているのです。
    そして、このために、どうなるか分からない先のことが異常に心配になったりするものなのです。
    そして、こういう状態になっているのが心配性に悩んでいる時の特徴になります。

    3)雑音恐怖症
    これは他人の出す音や他の物から出る音が気になってしまい、心が落ち着かなくなってしまうという悩みになります。
    線路の側に引っ越してきた人が電車の通る時の音が気になるようになってしまい、眠れないと悩んでしまうこともありますが、これも雑音恐怖症の状態だと言って良いと思います。
    つまり、雑念恐怖症の場合は、頭の中に浮かぶ色々な考えが邪魔だと感じてしまうものですが、雑音恐怖症の場合は他からの物音が邪魔だと感じ、気になってしまうということなのです。

  • 5.雑念恐怖症に影響すること

    何かをしている時に別の考えが頭に浮かび、目の前のことに集中できなくなってしまうというのは、別の考えが頭に浮かんだ時に、これを絶対に良くないことだと考え、邪魔者扱いし排除しようとしてしまうからなのです。

    そして、こうなってしまうのは、何事も100%完全でないと気が済まないという完全欲の「とらわれ」があるからなのです。

    そして、このような完全欲にとらわれやすいのは神経質性格を持っているからだと言って良いと思います。

    つまり、神経質性格のマイナス面が雑念恐怖症が起こるかどうかに大きく影響しているのだと思います。

  • 6.私の体験から雑念恐怖症について言えること

    私も昔、学生時代に授業中に他のことが頭に浮かび先生の話を集中して聞くことが出来ないといった記憶があります。

    また、会社に勤めていた頃は、昨日失敗したことが頭から離れず仕事がはかどらないといったことも経験したことがあります。

    ただ、こういうことがありましたが、だからといって雑念恐怖症に悩むようにならなかったのは、雑念に対する「とらわれ」が少なかったからではないかと思います。

    当時の私は人間関係のことで悩み、これに関する「とらわれ」が出来ていたために、雑念に対する「とらわれ」が起こりにくかったという面もあると思います。

    このことから考えると、雑念が起こることに対して、これを重大な、けっしてあってはならないことだという思いがあるかどうかが「とらわれ」が起こるかどうかの境目になるのではないかということです。

    つまり、今、雑念恐怖症に悩んでいる人は、仕事や勉強をしている時に、けっして雑念が起こってはならないという「かくあるべし」の考えを持っているということになるのだと思います。

    つまり、こういう考えがあるかどうかで雑念恐怖症に悩むようになるかどうかが決まってくるのだと思います。

  • 7.原因

    さきほども少し書かせて頂きましたが、人一倍、完全欲の強い神経質性格の特徴を持っているかどうかが雑念恐怖症になる原因の1つになると思います。

    そして、こういう神経質性格の特徴を持っている人が、他のことが頭に浮かび仕事に集中できないといった経験をすると、これがキッカケになり雑念恐怖症に悩むようになるのだと思います。

    つまり、仕事をしている時は他のことを考えたりしては絶対にいけないという考えがあると、どうしても、無理に他のことが頭に浮かばないようにしようとしてしまうものなのです。

    しかし、これは感情を意志の力で変えようとする不可能を可能にしようとする努力ということになってしまうのです。

    ですから、この結果は、逆に余計に他のことが頭に浮かぶようになってしまうものなのです。

    そして、この繰り返しの中で雑念に対する「とらわれ」が出来てしまうということなのだと思います。

  • 8.「とらわれ」が原因ではない場合の対応

    雑念が気になってしまうという悩みは神経症以外の場合でも起こることがあると思います。

    統合失調症などの心の病気に悩んでいる人の中には雑念が気になってしまうという人もいると思います。

    そして、こういう「とらわれ」が原因ではない場合は元になっている心の病気の治療が必要になってくると思います。

  • 9.「とらわれ」が原因の場合の克服方法

    この場合は森田療法の学習をしていく中で、別のことが頭に浮かび仕事や勉強に集中できないという状態を「あるがまま」に受け入れることが出来るようになれば、この結果として、雑念恐怖症の症状は改善してくるものなのです。

    ただ、このためには目的本位など森田療法の考え方をきちんと頭に入れた上で毎日の行動の仕方を軌道修正していくことが大切になってきます。

    森田療法では、これを実践と言っていますが、この実践を積み重ねていく中で自覚が深まり「目的本位のクセ」が身についてくると、これに比例して雑念の「とらわれ」を「あるがまま」に受け入れることが出来るようになってくるものなのです。

    そして、この結果、雑念恐怖症を克服することが出来るということなのです。