(薬や手術などの治療に頼らず対処していくための説明)

  • 1.はじめに

    汗が異常に出てしまうことで悩むのが多汗症ということになりますが、あるデータによると国民の7人に1人位に現れている症状だと言われています。

    ただ、一口に多汗症と言っても、原因となる病気があって起こる続発性多汗症と呼ばれているものと、明らかな原因がない原発性多汗症と呼ばれているものがあります。

    原因がハッキリしている多汗症の場合は、元の病気を治せば汗の症状も治まってきますから、それほど悩まずに済むものだと思います。

    しかし、明らかな原因が分からず厚生労働省による難治性疾患の対象にもなっている原発性多汗症の場合、長い年月、悩んでしまうことが多いと思います。

    しかし、今は原因不明の原発性多汗症の場合でも手術や、ある種の療法には健康保険が適用され、治療が行なわれているのが現状だと思います。

    しかし、これでは「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」状態であり、あまり効率的ではないように思います。

    しかし、森田療法の立場からすると、今、原因不明と言われている原発性多汗症の大部分は発汗恐怖症と呼ばれる神経症が原因になっていると言えるのです。

    特に、心配性や完全欲の強さ、負けず嫌いといった神経質性格の特徴を持っている人の場合は、神経症が原因になっている多汗症の可能性が高くなると思います。

    そして、この場合であれば、森田療法の学習をしていく中で汗に対する「とらわれ」が薄れてくれば、この結果として症状が改善してくるものなのです。

    ですから、今、長い間、多汗症に悩まれている方は、このページの内容を参考にして頂き、これからの治療の方向を検討してみると良いのではないかと思います。

  • 2.どういう症状ですか?

    今、上にも書きましたが、多汗症は大きく分けて続発性多汗症と原発性多汗症の2つになります。

    続発性多汗症は甲状腺や下垂体の疾患、真性糖尿病、腫瘍、痛風、更年期障害、特定の薬物や水銀中毒といった明らかな原因がある場合になります。

    これに対して原発性多汗症は明らかな原因がなく、思春期の頃から発症することが多いと言われています。

    しかし、この原発性多汗症の大部分は神経症が原因になっていると考えて良いのではないかと思います。

    特に神経質性格の特徴を持っている人の場合には、この可能性が高くなると思います。

    具体的な例を挙げますと、下記のような状態が多汗症の症状になります。

    1.手汗のために書類に染みが出来てしまう。
    2.手が湿っているために握手をした時に相手を不快にしてしまうと感じる。
    3.大量に汗をかくために手のひらがベトベトしてしまう。
    4.ストレスを感じた時に手に異常に汗をかいてしまう。
    5.寝ている時は手のひらの汗は気にならない。
    6.テストの時に答案用紙に汗がしみて破れてしまうことがある。
    7.パソコンのキーボードやマウスがベタベタになってしまう。
    8.スマホの画面が汗でベトベトになってしまう。
    9.スマホや携帯、タブレットなどに汗がしみて壊れる。
    10.握手を求められた時に困ってしまう。
    11.手汗が気になり好きな人と手をつなぐのを避けてしまう。
    12.車の運転中にハンドルが滑り危ない思いをした。
    13.汗拭き用のハンカチを持っていないと不安になる。
    14.汗で書類が濡れたりして、勉強や仕事に集中できない。
    15.足の汗のために靴の中が蒸れてしまい気になる。
    16.自宅のフローリングの床が汗でベトベトになってしまう。
    17.サンダルを履く時に足の裏が滑って歩きにくい。
    18.水虫になりやすくなった。
    19.脇汗のためにブラウスやシャツがしみて見た目が悪く気になる。
    20.汗がシャツがしみて着心地が悪く感じる。
    21.汗拭き用のハンカチを持っていないと不安になる。
    22.脇汗と共にワキの臭いも気になる。
    23.心配で制汗グッズ(スプレーやパウダーなど)を持ち歩いている。
    24.外出先などで着替えの服がないと不安になる。
    25.シャツに汗染みが出来て人目が気になってしまう。
    26.顔の汗が目立ってしまい恥ずかしい。
    27.顔の汗のために化粧が崩れてしまう。
    28.人と話している時に頭から汗が大量に垂れてくるので目立ってしまう。
    29.頭部の汗のために髪の毛がびしょびしょになってしまう。
    30.頭の汗のために髪型が崩れてしまう。
    31.頭が蒸れて臭いが気になることが多い。
    32.ラーメンを食べたりすると全身に異常な量の汗をかく。


    上に挙げさせて頂いた1から14が手のひらの汗の悩みである手掌多汗症(しゅうしょうたかんしょう)、15から18が足底多汗症、19から25が腋窩多汗症(えきかたかんしょう)、26から27が顔面多汗症、28から31が頭部多汗症、32が全身多汗症と言われている症状になります。
    この中で32は続発性多汗症だと考えて良いのではないかと思います。
    そして、32以外の原発性多汗症は神経症が原因になっていることが多いと思います。
    ただ、神経症が原因の多汗症かどうかは、神経質性格の特徴を持っているかどうかが判断基準になると思います。

    神経症が原因になっている多汗症は発汗恐怖症とも呼ばれますが、人前で緊張した時などに汗が異常に出てしまい、人から変に思われるのではないかと感じ、悩んでいることが多いものです。

    また、汗が出る場所は上記の具体例でも書かせて頂きましたが、手のひらだったり、脇の下だったり、背中だったりと、いろいろですが、この多汗症に悩む人が、最近は増えているように感じます。

    特に女性の場合などは、ブラウスの脇の下に汗のしみが出来ることが気になってしまうということで悩んでいる人が多いように思います。

    そして、このために、中には脇の汗を吸わせるためのパットや制汗スプレーを使ったりする人もいます。

    また男性の場合は、ズボンのお尻の部分に汗をかいてしまうことが気になるという人もいます。

    汗をかくかどうかは、本来、体質的に個人差があるものなのですが、多汗症で悩んでいる人は、自分が異常に汗をかいていると、常に、このことが気になってしまうものなのです。

    また、上記の具体例の22のように、多汗症と同時に、汗の臭いが人に伝わり、人に迷惑をかけていると感じてしまう人も多いものです。

    特に脇の汗の臭いが気になってしまう人が多いのですが、これがワキガと言われているもので、これは森田療法の立場から言うと体臭恐怖や自己臭恐怖症という症状に該当します。

    汗の量や臭いというのは先ほども書きましたが、体質的に個人差の大きいものなのですが、体臭恐怖や多汗症に悩んでいる人は客観的に見ると汗の量や臭いは平均よりも、むしろ少ないくらいなのですが、自分では異常に多いと感じていることが多いものなのです。

    また、私の感じとしては、お洒落や身だしなみに気を使う人の方が汗に敏感になり、多汗症に悩みやすい傾向があるように思います。

    なお、この多汗症の症状も人から変に思われるのではないかという不安がベースになっていますので、対人恐怖症の症状の一つに入ると言って良いと思います。

  • 3.何が原因なのでしょうか?

    先ほども書かせて頂きましたが、甲状腺や下垂体の疾患、真性糖尿病、腫瘍、痛風、更年期障害、特定の薬物や水銀中毒といったものが原因となっているのが続発性多汗症と言われているものになります。

    これに対して一般的に多汗症と言われている、原発性多汗症は明確な原因が分からず、アポクリン腺やエクリン腺といった汗腺や神経などの身体の異常が原因だと予測されていますが、ほとんどの場合、神経症の「とらわれ」が原因だと考えて良いのではないかと思います。

    つまり、たまたま、人前で汗をかき、恥ずかしい思いをしたりすると、このことが「キッカケ」になり、また、前と同じように汗をかき、周りの人から変に思われるのではないかと不安を感じるようになるものなのです。

    そして、この不安に引きずられて、人前に出ることを避けてしまうと、この繰り返しの中で汗に対する「とらわれ」が強くなり、多汗症の症状が形成されてしまうものなのです。

    つまり、人前でたくさん汗をかくことで、人から変に思われると感じ、汗が出ることを異常なこととか「良くないこと」と考え、排除しようとしてしまうことで、汗に対する「とらわれ」が強くなり、多汗症の症状として現れるようになってしまうものなのです。

    ですから、一般的に多汗症と言われている、原発性多汗症の場合は、ほとんどが汗腺や神経などの身体の異常が原因ではなく、汗に対する「とらわれ」という精神的な原因で起こる症状だと言って良いと思います。

  • 4.薬や手術による治療

    先ほど書かせて頂いたような汗の悩みのために皮膚科や美容外科などの病院に行くと、今は下記のような治療が行なわれることが多いと思います。

    1.塩化アルミニウムによる外用薬治療
    塩化アルミニウムの20~50%水溶液を、手のひらや足の裏、わきの下など、汗の気になる所に塗るというものです。

    2.水道水イオントフォレーシス治療
    水を入れた専用の機器に弱い電流を流し、20分間ほど手や足を浸すというものです。アメリカでは一般的な治療法であり、日本でも健康保険が適用されるようです。

    3.ボトックス注射(ボツリヌス療法)
    ボツリヌス毒素を幹部に直接注射する治療法です。欧米では一般的であり、日本でも2012年に健康保険が適用されるようになったようです。

    4.ETS(交感神経遮断手術)
    胸部交感神経を切断する手術です。手汗などに適用されているようですが、副作用も大きいようです。

    5.剪除法(外科手術)
    アポクリン腺やエクリン腺といった汗腺の一部を取り除く手術です。 これも健康保険が適用されるようです。

    6.神経ブロック注射
    元々は痛みを和らげるための治療法ですが。多汗症の症状を緩和する効果もあると言われます。

    7.抗コリン薬内服による治療
    プロバンサインという商品名の抗コリン薬によりエクリン腺の刺激を抑え汗の量を減らす効果を期待したものです。

    8.マイクロウェーブ療法
    マイクロウェーブと呼ばれる電磁波の照射により汗腺組織を破壊するものです。

    大まかに分類すると上記のようになりますが、今は健康保険が適用される治療法もありますので、ますます、これらの治療を受ける人が増えているのではないかと思います。

    しかし、禁煙外来の例もあるように健康保険が適用されるからといって、必ずしも治療効果が期待出来るとは言えないと思います。

    また、今まで書かせていただいたように、原発性多汗症の症状に悩み、心配性などの神経質性格の特徴を持っている人の場合は、上に書かせていただいたような治療法よりも、森田療法の学習で対応していった方が治る可能性が高いと思います。

  • 5.薬や手術などの治療に頼らず対処していく方法

    今、上にも書かせていただきましたが、一般的に多汗症と言われている、原発性多汗症はアポクリン腺やエクリン腺といった汗腺や神経など身体の異常が原因ではなく、汗に対する「とらわれ」、つまり、神経症から起こってくるものだと言えるのです。

    ですから、病気や身体の異常が原因の続発性多汗症の場合とは話が異なるのです。

    つまり、今、上に書かせて頂いたような薬や手術などの治療をしても、一時的に症状が良くなったように思えても、また少し経つと、多汗症の症状が再発し、なかなか良くならないことが多いものなのです

    しかし、森田療法の学習をしていく中で汗の症状に対する受け止め方が変化し、精神的な原因である「とらわれ」が薄れてくると、この結果として多汗症の症状が改善してくるものなのです。

    つまり、人前で顔が赤くなってしまう赤面症や、人前で手が震えてしまう書痙などと同じように、人前での緊張や汗の症状を「あるがまま」に受け入れることが出来るようになると、この結果として多汗症の症状が治ってくるということなのです。

    ですから、これが薬や手術に頼らない、もっとも確実な治療法になると言って良いと思います。