(原因と克服方法の解説)

  • 更新日 2021.05.05
  • 1.書痙とは

    手が震える悩みである書痙は「しょけい」と読みますが、人前で文字を書く時に緊張し震えてしまい、うまく字が書けず恥ずかしい思いをするという状態のことを言います。

    葬儀や結婚式などでの記帳や、旅館に泊まる時のサインなどで悩んでいる人も、案外、多いものです。

    また、文字を書く時ではなく、宴会で、お酒をついだりする時に手が震えることで悩んでいる人もいます。

    また、乾杯をする時にコップを持つ手が震えてしまうという人もいます。

    これらも手が震える悩みである書痙の一種ですが、「茶痙」(ちゃけい)と呼ばれることもあります。

    これは、お茶を出す時に手が震えてしまい悩むということも多いために、このように呼ばれたのではないかと思います。

    なお、書痙も対人恐怖症に含まれますが、対人緊張などはあまり見られず、ある程度の年齢で働き盛りの人に多く見られる傾向があります。

    例えば、個人で事業をしている人とか会社の管理職をしている人などに比較的多く見られる傾向があるように思います。

    また、むしろ書道を習ったりしており、人から字が上手だと言われるような人の方が悩むことが多いように思います。

    これは、こういう人達は人前で字を書く機会が多かったり、あまり下手な字が書けないという思いが強いからではないかと思います。

    ただ、書痙の場合は同じ対人恐怖症でも人付き合いには支障が出ていない人が多い傾向があります。

    こういう意味で普通神経症に分類されることもあります。

    なお、パーキンソン病など、純粋に体の異常から手の震えが起こることもありますが、この場合には字を書く時といった特定の状況の時ではなく、特に手に力を入れていない状況の時にも震えが起こってくるものなのです。

    つまり、緊張しているかどうかに関わらず手が震えるものなのです。

    ですから、この場合は書痙とは別だと考えて良いと思います。

    また、今は手の震えで病院に行くと本態性振戦と言われることが多いですが、この中には書痙の場合が、かなり多く含まれていると思います。

  • 2.原因

    書痙は脳や神経の異常から来るものではなく、震えによって人から変に思われたらどうしようという不安に対する「とらわれ」から来るものなのです。

    ですから、いくら薬を飲んだり手の神経の手術をしても、これでは治らないと言えるのです。

    しかし、森田療法の学習をしていく中で、手の震えに対する「とらわれ」が薄れてくれば、この結果として改善してくるものなのです。

  • 3.克服方法

    書痙に悩んでいる時は字を書く時の手の震えを異常なものだと考え排除しようとしているものです。

    そして、このために人前で字を書くことから逃げていることが多いものなのです。

    しかし、このように手が震えの不安に引きずられ人前で字を書くことから逃げてしまうと、一時的には楽が出来ても、長い目で見ると、ますます手の震えに対する「とらわれ」を強くしてしまうものなのです。

    ですから、まず、手が震えても必要な字が書ければ充分なんだと受け止め、人前で字を書くことから逃げないようにしていくのが第一歩になると思います。

    そして、この上で、目的本位や「あるがまま」など、森田の考えに従って行動するようにしていくと、手の震えに対する「とらわれ」薄れ、この結果として、少しずつ書痙の悩みを克服できるものなのです。