(原因、克服方法の解説)

  • 更新日 2020.03.04
  • 1.概要説明

    対人恐怖症は一言で言うと「人が苦手で人と話すのが怖い悩み」ということになりますが、人前で緊張し思うように話が出来なくなってしまうとか、顔が赤くなってしまう、人の視線が気になってしまう、といった形で現れてくるものです。[1]

    森田正馬先生は「神経質が死を恐れるために生の欲望を忘れるように、対人恐怖は負けることを恐れるために勝ちたいことを忘れ、羞恥を恐れるために人に優りたいという無視してしまう。」[2]と言われていますが、対人恐怖症に悩んでいる時は本来の欲望を忘れ、人から変に思われるのではないかとか、嫌われたらどうしようといった対人関係の不安にだけ注意が向いた状態になっているのです。

    つまり、人見知りをするとか、人に気を使うということは、誰にでも多かれ少なかれあるものですが、これが過度に強くなり「とらわれ」が出来ている状態だと言って良いとと思います。

    そして、悩んでいる時は人間関係が苦手になったり、人付き合いが不安になってしまうことが多いものです。

    また、対人恐怖症を改善するために本を読んだり民間療法に頼ったり宗教に救いを求めたりすることも多いように思います。

    しかし、このような人が苦手で人と話すのが怖いという部分だけに目を向け、これを治そうとしてしまうと、逆に、かえって悩みを強くしてしまうものなのです。

    なお、最近は人が苦手で人と話すのが怖い悩みの場合でも病院で診てもらうと、社会不安障害などと診断され薬で治療されることが多くなってきたように感じます。

    また、最近、テレビや新聞などのマスコミで目にすることの多くなったコミュ障と言われているものの中には人が苦手で人と話すのが怖い悩みである対人恐怖症の場合が、かなり含まれているように思います。

  • 2.悩みのチェック

    対人恐怖症の主な表れ方をまとめると下記のようになります。[3]

    このため、ご自分の悩みが当てはまるかどうかをチェックしてみるのも良いと思います。

    (具体的な表れ方)
    1.赤面症:顔が赤くなることで悩む
    2.視線恐怖:人目が気になる
    3.劣等感:内気な性格が恥ずかしい
    4.書痙:字を書く時に手が震える
    5.震え恐怖:大勢の人前で足や声が震える
    6.笑顔恐怖症:笑った時に顔が引きつる
    7.表情恐怖:自分の表情が気になってしまう
    8.醜形恐怖症:自分の顔だちや体が醜いと思い込み悩む
    9.多汗症:人前で汗が異常に出てしまう
    10.正視恐怖症:自分の視線が相手を不愉快にすると感じ悩む
    11.吃音恐怖:人前でどもってしまう
    12.雑談恐怖症:仕事以外の会話になると話せなくなる
    13.おなら恐怖:おならのために周りの人から嫌がられていると感じる
    14.唾液恐怖症唾を飲み込む時の音が人に聞こえてしまう

  • 3.原因

    人が苦手で人と話すのが怖い悩みである対人恐怖症にどうしてなるかということですが、森田療法では2つの要因があると言っています。

    1つは「外的要因」と言われているものであり、学校の授業中に突然指名され発表する時に声が震えてしまったというような恥ずかしくショックな出来事が「キッカケ」になることが多いものなのです。

    そして、もう1つは「内的要因」と言われているものですが、不安や緊張などの感情や、赤面や震えなどの症状に対する「誤った考え方」というものが挙げられます。

    つまり、人前で緊張したり声が震えてしまうことを、人から変に思われる恥ずかしいことであり、絶対にあってはならないことだという「誤った考え方」があると、かえって緊張や声の震えの方に注意が向いてしまうことになるのです。

    そして、この結果、注意と症状の悪循環(精神交互作用)が起こり「とらわれ」が出来、人が苦手で人と話すのが怖い悩みを、ますます強くしてしまうものなのです。[4]

    そして、こういう「誤った考え方」や認識は神経質性格の特徴を持っている人に起こりやすいものなのです。[5]

    ですから、「外的要因」が「キッカケ」になり、神経質性格や感情や症状に対する「誤った考え方」などの「内的要因」によって、ますます強くしてしまうと考えて良いと思います。

    このため、この2つが原因だと言って良いと思います。

    つまり、脳とか神経の異常が原因ではないのです。

  • 4.改善と克服のための方法

    先ほども書きましたが、今は病院に行くと、人が苦手で人と話すのが怖い悩みである対人恐怖症の場合でも薬を出されるのが一般的になっていると思います。

    しかし、人が苦手で人と話すのが怖い悩みは「とらわれ」が出来ているために起こっているものなのです。

    ですから、いくら薬を飲んでも根本的な改善や克服には結びつかないのです。

    つまり根本的な改善や克服のためには、まず、今は悩んでいる最中だから緊張して当然なんだと受け止めるようにしていくのが第一歩になると思います。

    そして、この上で、目の前の「なすべきこと」を1つ1つ、きちんとこなすようにしていくことが大切になってくるのです。

    つまり、これが森田療法で言っている目的本位の行動ということになるのです。

    そして、このように目的本位に行動していくことで、その時の緊張を「あるがまま」に受け止めることが出来るものなのです。

    そして、この積み重ねの中で少しずつ、人が苦手で人と話すのが怖い悩みが改善してくるものなのです。

    ですから、これが人が苦手で人と話すのが怖い悩みである対人恐怖症の克服法になると言って良いと思います。

  • 脚注
    [1]心療内科・精神科の医療法人和楽会、対人恐怖症 - 社会不安障害 2020年02月27日閲覧。
    [2]「赤面恐怖の治し方」(森田正馬,高良武久,白揚社,1953/1981)P.16-20
    [3]Wikipedia、対人恐怖症 2020年02月27日閲覧。
    [4]「心の再発見」(長谷川洋三,白揚社,1978/2000)P.104-118
    [5]公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団、神経症(不安障害)と森田療法~:神経症になりやすい性格背景 2020年02月23日閲覧。

    参考文献
    ・「神経質の本態と療法」(森田正馬,白揚社,1960/1979)
    ・「森田療法」(岩井寛,講談社現代新書,1986)
    ・「心の垣根を乗り越えて―神経症からの自己治癒」(南 博/沢崎 俊郎,学芸書林,1988
    ・「森田療法のすすめ」(高良武久,白揚社,2000/2009)

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