(原因と治療、克服のための説明)

  • 1.はじめに

    会議や発表会といった大勢の人前で話すような時にあがってしまい、思うように話せなくなってしまうと悩む人も多いものです。

    これが、いわゆる、あがり症と言われているものですが、このページでは、今、実際に悩んでいる人を対象として、森田療法の立場から解説させて頂きます。

    今、あがり症の症状のために心療内科などの病院い通い、社交不安障害といった診断をされ、薬を飲まれている人も多いと思いますが、森田療法の立場から考えると、これでは、根本的な克服には結びつかないと言えるのです。

    ですから、何年も病院に通い、薬を飲んで治療しているけれど、なかなか症状が改善しないという人は、このページの内容を参考にして頂き、これからの対応を検討されると良いのではないかと思います。

  • 2.あがり症とは

    あがり症は、人前で緊張してしまい、思うように話が出来なくなってしまうとか、顔が赤くなってしまう、人の視線が気になってしまう、という形で現れてきますが、強迫神経症の中でも特に日本人に多く見られると言われています。

    インターネットのサイトの中には、あがり症を対人恐怖症や社交不安障害の前段階の軽い状態だと解説しているところもありますが、このサイトでは単に名称が異なるだけであり、実質的には全く同じ症状だと考え、扱っております。

    このため、対人恐怖症や社会不安障害のページの内容と重複する部分もあると思いますが、この点はご了承いただければと思っております。

    ちなみに、今は社交不安障害という病名が使われることが多くなりましたが、このサイトでは従来から使われている、社会不安障害という名称で解説しております。

    あがり症の、いずれの症状も、人から変に思われるのではないかという不安が根底にあると言えます。
    つまり、この対人不安が根本原因だと考えて良いと思います。

    人見知りをするとか、人に気を使うということは誰にでも多かれ少なかれあるものですが、これが過度に強くなり、「とらわれ」や身体的症状として慢性的に起こるようになったのが、あがり症だと言っても良いのではないでしょうか。

    特に、日本のような集団行動を重視する農耕民族型の社会においては、人間関係が崩れることは、社会的に死を意味するため、この社会的な「死の恐怖」が影響して、あがり症の症状が起こりやすくなっているのではないかと思います。

    また、あがり症に悩んでいる人は、かつての私もそうでしたが、何とかして人前であがってしまうという悩みを克服しようと考え、話し方教室に通ったり、人間関係改善のためのハウツー本を読んだり、心の悩みの治療法や解決法、また、カウンセリングを初めとした心理学関係の本を読んだりすることが多いと思います。

    また、あがりやすい性格を治すために民間療法を試みたり、宗教的な修行に救いを求めたり、漢方薬を飲んだり、最近ではインデラルといった市販薬を飲んだりすることも多いように思います。

    しかし、これらの行動は森田療法で言っている症状だけに目を向け、これを無くそうとする気分本位の「はからい」の行動になってしまいますので、一時的には良くなったように思えても、根本的な治療にはならないと言えるのです。

    むしろ、逆に、こういう気分本位の「はからい」の行動を取れば取るほど、あがり症の症状は克服できるどころか、かえって強くなってしまうものなのです。

    ですから、この点は注意が必要だと思います。

  • 3.症状のチェックと診断

    あがり症の現れ方は千差万別と言っても良いくらい、色々なパターンがありますが、主なものを挙げると下記のようになります。

    これらの中に思い当たることが、いくつかあれば、あなたは、あがり症の可能性があると思います。

    1.大勢の人前で話す時に動悸が激しくなる。
    2.発汗のため人から変に思われているように感じる。
    3.自己紹介などの時に手や足が震えてしまう。
    4.歳の近い異性と話す時に顔面が紅潮してしまう。
    5.大勢の人の前でスピーチをする時に緊張してしまう。
    6.目上の人や社会的地位の高い人と話す時にあがってしまう。
    7.知らない人に気軽に話しかけられない。
    8.他人の視線や注目を浴びるのが怖い。
    9.叱られたり非難されると落ち込みやすい。
    10.人前でサインをしたり字を書く時に手が震えてしまう。
    11.他人と飲んだり食べたりするのが苦手。
    12.男性用公衆トイレで隣に人がいると尿が出なくなってしまう。
    13.周りに人がいる時に電話に出るのが苦手。
    14.忘年会や歓送迎会などの飲み会に出席するのが苦痛。
    15.異性の前で顔が赤くなってしまう。
    16.会議で発表する時に動悸を感じる。
    17.会社の朝礼でスピーチをする時に声が震えてしまう。
    18.お客さんの前で話す時に手や額に汗を大量にかいてしまう。
    19.苦手な人と話している時に顔の筋肉がこわばり引きつってしまう。
    20.人と会う前に尿が近くなる。
    21.発表会などで話している時に頭が真っ白になる。
    22.職場の会議で仕事の状況を発表するのが苦手である。
    23.プレゼンテーションをする前に不安になってしまう。
    24.自己紹介の時に緊張し言葉が詰まってしまう。
    25.面接試験で思っていることを話せなくなる。
    26.雑談など何気ない会話の輪に入れない。
    27.スーパーなどの買い物で人目が気になってしまう。
    28.商談の時に、ちゃんとスラスラ話せるか心配になってしまう。
    29.重要な会議で落ちついて、きちんと説明できるか不安になる。
    30.沢山の人の前で話すような時に心臓がドキドキしてしまう。
    31.発表会などで身体が震えてくる。
    32.苦手な状況に置かれると、軽くめまいがすることがある。
    33.苦手な人と話している時に身体が熱くなる。
    34.電話でどもり、声が震えてしまうことがある。
    35.発表や報告の前に憂鬱になってしまう。
    36.朝礼や会議で心臓がドキドキし吐き気が起こる。
    37.スピーチを何度やっても場慣れせず、一向に慣れない。
    38.普段は話せるが、かしこまった場になると緊張し話せなくなる。
    39.人前で話すときに頭が震えてしまう。
    40.緊張すると手足が震え、挙動不審になる。
    41.上司の前だと声が震えて上手く話せなくなる。
    42.人の視線が気になり、ぎこちなくなってしまう。
    43.好感を持っている異性がいる場合、よけいに緊張してしまう。
    44.面と向かって話しをするのが苦手である。
    45.緊張すると顔や手などの汗が止まらなくなる。


    あなたは、いくつ位、思い当たるチェック項目がありましたか。
    重複している項目もあると思いますが、これらが、あがり症に悩んでいる時に起こりやすい症状になります。

  • 4.あがり症と共通する神経症の主な症状

    具体的な症状は上記のチェック項目にも挙げさせて頂きましたが、これらの中には神経症の症状として別の名称がついているものもあります。

    このため、これらの症状について解説させて頂きます。

    1.笑顔恐怖症
    この症状は、みんなと雑談していて、誰かが面白いことを言い、笑うような状況が訪れた時に自分の笑顔が引きつっているように感じ、周りの人から変に思われるのではないかと悩んでしまうものです。
    また、あまり面白くない話の時に気を使って無理に笑おうとすると顔の引きつりを感じ、不自然な笑顔になってしまうという形で起こることも多いものです。
    このため人と接することを避けてしまうことで、人前で、さらにあがりやすくなってしまうものなのです。

    2.赤面症
    これは赤面恐怖症と言われることも多いですが、人前で話すような時に顔が赤くなってしまうことで悩む症状です。
    あがり症と言うと、この症状を思い浮かべることが多いのではないかと思いますが、もっとも起こりやすい症状だと言って良いと思います。
    そして、男性であれば女性に対して、女性であれば男性に対してというように、異性に対して起こりやすいというのも赤面症の場合の特徴ではないかと思います。

    3.スピーチ恐怖症
    これも、あがり症の典型的な症状だと言って良いと思います。
    会社の朝礼当番に当たり、何か話さなければいけないような状況の時とか、会議や発表会など大勢の人前で話をしなければならないような時に緊張し、赤面したり汗をかいたり、声や体が震えてしまうというのがスピーチ恐怖症の特徴だと言って良いと思います。
    中には朝礼当番で何か話さなけばいけないというのが苦痛で会社を辞めてしまう人もいる位なのです。
    ですから、これも深刻な悩みであり症状になると言って良いと思います。

    4.対人不安
    面接の前に不安になってしまうとか、目上の人や苦手な人と会う前に憂鬱になってしまうというのが、この症状の代表的な現れ方になります。
    ですから、相手が人間の場合の予期不安と言っても良いと思います。
    不眠症の場合であれば、今夜もまた眠れなかったらどうしようと感じるのが予期不安ということになりますが、この場合は睡眠に対する予期不安ということになります。
    また、パニック障害の場合であれば、電車に乗っている時に動悸や息苦しさの発作が起こったらどうしようと予期不安を感じますが、この場合は「死の恐怖」に対する予期不安ということになると思います。

    5.対人緊張
    これは、あがり症の症状のベースになるものだと言って良いと思います。
    つまり、人前で緊張してしまうことで、あがり症の色々な症状が起こってくるものなのです。
    そして、この対人緊張は人から良く思われたいとか評価されたいという欲求が強ければ強いほど感じやすくなるものなのです。

    6.書痙(しょけい)
    これは結婚式とか葬式の受け付けて名前を書く時に手が震えてしまうというのが典型的な現れ方になります。
    しかし、名前などの文字を書く時だけではなく、例えば理容師さんの場合であれば、ハサミやカミソリを持つ手が震えてしまうという形で現れてきます。
    また、看護師さんの場合であれば、注射をする時に手が震えてしまうと悩むことが多いものなのです。
    このように、その人にとって一番重要だと感じている行為の場合に手の震えが起こるというのが書痙の特徴だと言って良いと思います。
    また、宴会などの飲み会でコップにビールを注いでもらう時に手が震えてしまうという人も多いものです。
    また、女性社員でお客様にお茶を出す時に手が震えてしまうということもあります。
    この場合は「茶痙(ちゃけい)」と呼ばれます。

    7.震え恐怖症
    6の書痙が手の震えに限定されるのに対して、この症状は体の他の部分も含めて震えが起こる場合の症状になります。
    大勢の人前で話すような時に緊張し足が震えたり、頭が震えるということで悩んでいる人も多いものです。
    また、話す声が震えてしまう場合も、この症状に含めて良いのではないかと思います。
    なお、電話に出て、初めの一言が詰まってしまうというのは吃音恐怖の症状に入ると思います。

    8.自己表情恐怖
    人と話している時に顔が引きつってしまうために、相手から変に思われているのではないかと悩むのが、この症状になります。
    つまり、自然な顔が作れず、引きつりや強張りのために不自然な表情になってしまうことで相手から変に思われると感じてしまう症状なのです。
    笑顔恐怖症の場合は笑う時の顔の引きつりに悩むのですが、この症状の場合は笑う時に限らず、自分の顔の表情が気になってしまうということになります。
    なお、目上の人や異性など、緊張したり構えてしまうような相手と話すような時に起こりやすいというのは、他のあがり症の場合と一緒になります。

    9.醜形恐怖症
    この症状は自分の容姿が醜く、このため人から嫌われたり避けられたりすると感じるものです。
    背が低いとか、太っているとか、顔が不細工であると感じることで非常に強い劣等感を抱いているのが特徴だと言って良いと思います。
    そして、このように自分の容姿に対して劣等感や引け目があると、自分に対して自信が持てず、より人前で、あがりやすくなるのだと思います。

    10.多汗症
    人前で緊張した時に汗が異常に出てしまうと悩むのが、この症状になります。
    森田療法では発汗恐怖症と呼ばれることの方が多いように思います。
    なお、この症状は赤面症と共に、あがり症の場合の最も良く見られる症状になると思います。
    また、赤面と同時に汗が異常に出てしまうということで、同時に起こることも多いものです。
    汗をかく場所は手のひらや顔、頭、背中などが多いですが、脇にかく汗で悩んでいる人も多いものです。
    特に夏場など薄着の季節に脇汗が気になってしまうと悩む女性が多いように思います。
    このため、脇汗パッドといった商品も市販されている位なのです。

    11.正視恐怖症
    この症状は人と面と向かって話すような状況の時に相手の目を見ることが出来ないため、目のやり場に困ってしまうという形で起こることが多いものです。
    誰でも人と面と向かって座るような時は目のやり場を意識してしまうものですが、これが極端になっているのが正視恐怖症だと言っても良いと思います。
    そして、この症状も人前で緊張しやすく、あがりやすい人に多く見られるものなのです。

    12.視線恐怖症
    正視恐怖症の場合は人の目を見ることが出来なくなるのですが、この症状の場合は人の目が気になってしまい、ぎこちなくなるという形で現れてきます。
    誰でも人の視線を意識することはありますが、これが度を越した状態が視線恐怖症だと言って良いと思います。
    そして、この症状のために赤面や発汗といった症状が、より起こりやすくなると言っても良いと思います。
    こういう意味で、この症状は対人緊張と共に、あがり症の根底にあるものだと言っても良いのではないかと思います。
    震えにしろ、唾にしろ、人目が気になるために起こる症状ですから、あがり症の症状のベースになるのが視線恐怖症だと言っても良いのではないかと思います。

    13.吃音症
    この症状は吃音恐怖と呼ばれることもありますが、会社の電話に出るような時に、最初の言葉が詰まってしまい会社名を言うことが出来なくなるといった形で起こってくることが多いものです。
    そして、また、言葉が詰まって無様な姿を晒すことになったらどうしようと予期不安を感じてしまうのが吃音症の場合の特徴だと言って良いと思います。
    ただ、吃音症の場合は、本当の吃音障害の場合とは異なり、他の人からは症状が分からないことが多いものなのです。
    つまり、自分自身で言葉が詰まったり、吃ると感じ、悩んでいることが大部分だと言って良いと思います。

    14.雑談恐怖
    会社や学校の休憩時間などに何人かで雑談をしている時に、この話の輪に入ることが出来ないと悩むのが、この症状になります。
    あがり症に悩んでいる時は、一対一であれば何とか話が出来るけれど、3人以上になると、途端に話せなくなってしまうという人も多いものなのです。
    そして、これが雑談恐怖の症状だと言っても良いと思います。
    一対一であれば何とか話せるけれど、3人以上になると話せなくなってしまうというのは、私自身も経験することですが、これは、一対一の場合は、自分以外に話す人間がいないために、いわば「背水の陣」の状況に置かれるために緊張しながらも話すことが出来るのだと思います。
    これに対して3人以上の場合は、無意識のうちに自分が話さなくても他の二人で話すだろうと感じ、逃げ道が出来てしまうために「背水の陣」の気持ちになれず、このため話すことが出来なくなってしまうのだと思います。
    いずれにしても、あがり症に悩んでいる時は、この雑談恐怖の症状も起こりやすいものだと思います。

    15.おなら恐怖症
    これはガス恐怖と言われることもありますが、教室とか職場など周りに人が大勢いるような状況の中で、自分では気付かないうちに、おならが出てしまい、このため、周りの人から嫌がられていると感じる症状になります。
    ただ、他の、あがり症の症状とは少し傾向が異なるように思います。
    つまり、おなら恐怖症に悩んでいる人は、あがり症の傾向よりも強迫神経症の傾向の方が強いように思います。
    また、中には、強迫観念が強く、統合失調症レベルの場合もあるように思います。
    そして、このレベルになると森田療法では対応できなくなると思います。

    16.唾恐怖
    自分の飲み込む唾の音が周りの人に気付かれ、嫌な思いをさせていると感じ悩むのが、この症状になります。
    おならの場合は、その臭いが人に嫌な思いをさせると感じているのですが、この唾恐怖の場合は、唾を飲み込む時の喉から出る音が人に不快感を与えると感じているものなのです。
    こういう意味で、この症状も、どちらかと言うと強迫神経症の傾向が強くなると思います。

    17.電話恐怖症
    この症状は吃音恐怖や視線恐怖症などとも絡み、あがり症の場合に良く見られるものです。
    会社の職場などで周りに人が沢山いるような状況の時に、かかってきた電話に出るのが苦手だったり、自分から電話をかけることに戸惑ってしまうという形で症状が現れます。
    これは電話で話す時に周りにいる人たちの目が気になるためなのですが、この背景には自分の話し方に対する劣等感があるものなのです。
    つまり、言葉に詰まったり、きちんとした話が出来ないという、あがり症特有の劣等感が影響していると言って良いと思います。
    この症状のために、かかってきた電話に出るのを避けてしまったり、周りに人がいない時を見計らって電話するという人も多いものです。
    また、今はメールが普及していますから、電話の代わりにメールを使うということで電話から逃げている人も増えていると思います。

    18.男性恐怖症
    この症状は若い女性に良く見られるものだと思います。
    特に結婚前の、まだ男性経験が少ない若い女性の場合に見られることの多い症状だと言って良いと思います。
    男性と話す時に、あがってしまい、赤面や発汗の症状が起こるといった形で起こることが多いと思います。
    また、男性の目が気になり勉強や仕事に集中できないという形で起こることも多いと思います。

    19.女性恐怖症
    この症状は18とは逆に若い男性に見られることの多い症状だと言って良いと思います。
    最近は生涯独身率も、かなり高くなっているようですが、女性経験の少ない男性も増えているように思います。
    そして、この中には、この女性恐怖症の人も、かなり含まれているのではないかと思います。
    昔の日本であれば、ある程度の年齢になるとお見合いの話が出てきて、結婚するのが普通でしたが、今は、お見合いという形が減ってきており、女性に対して積極的ではない男性などは適齢期になっても結婚の機会を逃してしまうことが多くなってきているのではないかと思います。
    そして、このために、中年くらいの年齢になっても女性恐怖症に悩んでいる人が増えてきているのではないかと思います。

  • 5.あがり症に影響すると思われる神経症の症状

    4では具体的な症状について書かせて頂きましたが、ここでは、あがり症の症状に影響しているのではないかと思われる症状をまとめてみました。

    1.劣等感
    あがり症に限らず、神経症に悩んでいる時は劣等感が強くなっているものです。
    人一倍、完全欲の強い神経質性格を持った人は自分自身に対しても完全を求めやすいものなのです。
    そして、このために、劣等感も感じやすくなるものなのです。
    つまり、理想が高ければ高いほど劣等感も感じやすくと言えるのです。
    性格が暗いとか、おとなしいとか、無口だとか、こういったところに劣等感を持っていると、より、人前で、あがり症の症状が起こりやすくなるのだと思います。

    2.予期恐怖
    これは、またあの時と同じように顔が赤くなったり、汗をかいたらどうしようと不安や恐怖を感じてしまう症状になります。
    予期不安とほぼ同じことだと言って良いと思います。
    動悸や息苦しさといった不安発作の起こる不安神経症の場合に、特に予期恐怖が強くなるのですが、あがり症の症状に対しても大いに影響していると思います。

    3.嫌疑恐怖
    学校や職場で何か物がなくなった時に、自分が盗んだと疑われるのではないかと感じ、悩んでしまうのが、この症状になります。
    そして、この症状に悩んでいる時は心の中に「後ろめたさ」を抱いているものなのです。
    しかし、この「後ろめたさ」のために、あがり症の症状を感じやすくなるという面があると思います。
    つまり、心の中に「後ろめたさ」があると、どうしても人目が気になったり、劣等感を感じやすくなってしまうものなのです。

    4.自己臭恐怖
    若い女性の場合などは「わきが」と言われている症状に悩むことも多いですが、これも、この症状に含まれると言って良いと思います。
    「わきが」の場合は脇の臭いのために、周りの人から嫌がられると感じ、悩んでしまうことになります。
    自己臭恐怖の場合は脇の臭いに限らず、足とか髪の毛の臭いや口臭なども含まれ、自分の体から出る臭いのために周りの人から嫌がられていると感じるものなのです。
    そして、この場合も、3と同様に自分の体から出る臭いに対する劣等感や「後ろめたさ」があるために、あがり症の症状も起こしやすくなるのだと思います。

    5.心配症
    これは、色々なことを取りこし苦労し心配しやすい人を指して、一般的に使われることも多い名称ではないかと思います。
    しかし、神経症における心配症というのは、こういう一般的なレベルを超えた場合に使われます。
    あがり症に悩むような神経質性格の特徴を持った人は、もともと心配性の傾向が強いものなのです。
    しかし、予期恐怖や不完全恐怖といった症状と合わさり、必要以上に色々なことが気になる状態に陥っているのが心配症ということになります。

    6.加害恐怖
    この症状は自分が人を傷付けたり危害を与えたりしてしまうのではないかと不安になってしまうものです。
    よくあるのが、自動車で通勤している人が帰宅してから、道の途中で人を跳ねてしまったのではないかと不安になり、確認しに行ってしまうというパターンです。
    つまり、自分では気付かないうちに他人に危害を与えてしまったのではないかと悩むのが、この加害恐怖と言われている症状になります。
    そして、この症状に悩んでいる時は自分に対する自信のなさや「後ろめたさ」を感じていることが多く、これが、あがり症の症状を起こしやすくすることが多いと思います。

    7.不完全恐怖
    出かける時に家の鍵を閉め忘れたのではないかと心配になり、確認しに戻ってしまうということは、誰でも、たまには経験することだと思います。
    しかし、これが極端なレベルになると、これは不完全恐怖と言われている症状になります。
    そして、この症状に悩んでいる時も、自分の行動に対する自信のなさや、「後ろめたさ」を感じていることが多く、これが、あがり症の症状にも影響することが多いと思います。

    8.脇見恐怖症
    これは正視恐怖や視線恐怖症に近い症状ですが、これらよりも強迫神経症の要素が強くなるために分けさせて頂きました。
    例えば教室で授業を受けている時に他の生徒が気になってしまい、黒板を見ることに集中できないといった形で起こってくる症状です。
    また、電車などに乗っている時に、見てはいけないと思いながらも、若い女性の胸や足などに目が向いてしまうといった形で起こることが多いものです。
    つまり、この症状は、自分の視線が良くない所に向いてしまい、このために、周りの人から変に思われるのではないかと感じる症状になります。
    ですから、あがり症の症状というよりも、強迫神経症の要素が強いと思います。

  • 6.原因

    あがり症の原因についてですが、今は脳内の神経伝達物質にあるとする説と、対人不安に対する「とらわれ」にあるという説の2つが知られています。

    6-1)神経伝達物質説
    初めに脳内の神経伝達物質にあるという説について簡単に説明させて頂きます。
    セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質は、意欲や不安、緊張といった感情と深い関係があるところから、あがり症の原因にもなっていると考えられています。
    緊張や不安を感じた時にノルアドレナリンなどの分泌量が増え、交感神経が刺激され、脈拍や体温、血圧が上昇し、動悸や発汗、震えなどの症状が起こりやすくなるという説です。

    6-2)「とらわれ」説
    神経質性格の特徴を持った人が、たまたま授業中に指名され本を読んだ時に顔が赤くなり汗をかいてしまったという経験があると、これが「キッカケ」になって、また、あの時と同じように緊張し、顔が赤くなったり汗が出たらどうしようという不安を感じやすくなるものなのです。
    そして、この不安だけに目を向け、これを無くそうとして行動することで赤面や発汗に対する「とらわれ」が出来、これによって、あがり症の症状が起こるというのが、対人不安に対する「とらわれ」説ということになります。
    つまり、この説の場合は症状に対する「とらわれ」が出来ることで、緊張や不安を感じやすくなるということなのです。

  • 7.神経伝達物質を原因とする場合の治し方

    7-1)薬物療法

    あがり症の原因が脳内の神経伝達物質の分泌量の異常にあるという説に基づけば、鬱病などに用いられるSNRIといった抗うつ薬などにより、ノルアドレナリンなどの分泌量をコントロールすることで治療が可能ということになります。

    そして、今は心療内科や精神科などの病院に行くと、この方向の治療をされることが多いと思います。

    これが、いわゆる薬物療法ということになるのですが、用いられる薬としてはSNRI、SSRIなどの抗うつ薬や、抗不安薬、ベータ遮断薬(アルマール)などがあります。

    薬物療法の場合は薬を処方すれば、これで済んでしまいますから、病院にとっては手間がかからず、収入に結びつくというメリットがあると思います。

    このため、あがり症の症状の場合であっても、鬱病と診断されることが多いのではないかと思います。

    つまり、抗うつ薬などの薬で治せるのであれば、鬱病と診断しても支障がないということになるのだと思います。

    しかし、今は、このために、10年、20年と心療内科や精神科の病院に通い、薬を飲み続けている人が増えているように思います。

    しかし、これは薬を飲むだけでは、あがり症の克服には結びつかないということを証明しているのではないかと思います。

    これらのことから薬物療法は病院にとってはメリットが大きいですが、悩んでいる患者の方のメリットは少ないと言えるのではないかと思います。

    7-2)その他

    あがり症の克服のために、昔から、色々な民間療法があります。

    具体的には腹式呼吸、温熱療法、筋肉弛緩法(ヨガやストレッチ)、冷却療法、筋トレ、肉食療法、アロマテラピー、ツボ療法などがあります。

    いずれも自律神経を整えたり、セロトニンの分泌量を増やすといった根拠のあるものです。

    しかし、これらはダイエットや器質的な鬱病などの場合には効果が出ることもあると思いますが、私自身の経験からは、あがり症に対しては、あまり効果が期待できないのではないかと思います。

  • 8.「とらわれ」を原因とする場合の克服方法

    8-1)森田療法

    赤面症や多汗症など、あがり症の症状に悩んでいる時は、人前での緊張や不安を感じて当然の時でも、これを異常なものとか恥ずかしいことと考え、排除しようとしていることが多いものなのです。

    そして、このために、ますます人前での緊張や不安を強くしてしまうという「悪循環」に陥っているものなのです。

    つまり、これが、あがり症の症状に対する「とらわれ」が出来た状態だと言って良いと思います。

    ですから、まず、今は、あがり症に悩んでいる最中だから、人前で緊張や不安を感じて当然なんだと受け止めるようにしていくのが治療、克服のための第一歩になると思います。

    そして、この上で、目的本位や「あるがまま」など、森田療法の考えに従って行動するようにしていくと、この繰り返しの中で、人前での緊張や不安を必要以上に大きくしなくて済むようになり、この結果として、あがり症の症状を克服することが出来るのです。

    以上が森田療法の場合の克服方法になります。

    8-2)その他の精神療法

    認知の誤りとか抑圧、条件反射などが、あがり症の「とらわれ」の原因だと考え、これに対応する精神療法もいくつかあります。

    具体的には精神分析や認知行動療法、イメージ療法、催眠療法といったものがあると思います。

    しかし、いずれも、あがり症を初めとした神経症の場合は、症状だけに目を向け、これを治そうとする方向になりますので、森田療法で言っている気分本位の「はからい」の行動ということになり、逆効果になってしまう可能性が高いと思います。

    最近は心療内科や精神科の病院で認知行動療法を取り入れる動きも出てきましたが、これも元々は器質的な鬱病の場合の精神療法であり、あがり症に適用するのには無理な点があるように思います。

    認知行動療法は細かな手法の面では森田療法と共通する部分も多いですが、あがり症の症状に目を向け、これを無くそうとするものですから、根本的な部分で方向が誤っていると思います。

    あがり症の場合、今、上に書かせて頂いたように、色々な精神療法がありますが、私の経験からは、森田療法が最も効果が期待できると思います。

  • 9.まとめ

    あがり症について、色々、書かせて頂きましたが、もし、いくらかでも納得できるところがあれば、このサイトの無料診断のページから、今のあなたの悩みや症状のことなどを書いて送って下さい。

    こうして頂ければ、あなたの今の悩みや症状がMTカウンセリングに適用できるかどうかを判断させて頂きます。

  • なお、もし、この、あがり症のページの内容が参考になりましたら、下のボタンから共有をお願い致します。

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